長岡行政書士事務所監修
長岡行政書士事務所監修
・お寺の住職と相性が合わないため、改葬をしたい
・墓じまいをやろうと思うけど流れがわからない
・墓じまいの手続きはどうするの?費用は?
今回は私たち行政書士事務所が実際に代行した事例をもとに流れや手続き等を見ていきたいと思います。
依頼される方の中には日ごろからのお寺との関係性が希薄でお寺に自分で行きたくないという方もおられます。また、離檀に伴ういわゆる離檀料についても「いくら請求されるかわからない」と不安を覚えて来られる方も少なくないです。
そんな中、結果的にお客様が当初聞いていた離檀料よりも少なくて済んだ事例となりました。今困っている方はぜひ最後まで読んでください。
※記事はお客様の匿名性を守るために実際の内容とは少しアレンジお伝えしておりますことご了承ください。
・お墓引っ越しの経緯から問題点
① そもそもの檀家になった経緯
② そこで発生した問題点
③ 改葬先の行方
・実際の流れ
① 必要な情報を得るための必要書類の収集
⑴ お墓の引っ越し(改葬)に伴う必要戸籍収集とその理由
⑵ 戸籍の収集の仕方及び費用
⑶ 遠方の場合の戸籍請求の仕方
⑷ 行政書士が見るポイントはここだ!
② お寺との連絡調整
⑴ お寺への連絡とその方法
⑵ お寺にかかる費用の確定(石工事の解体撤去・未払い管理費・お布施等)
⑶ 行政書士が見るポイントはここだ!!(お寺の考えていること)
③ 改葬許可申請の方法
⑴ 改葬許可申請書の入手場所及び申請先
⑵ 記入の注意点
⑶ 申請書一番のポイント お墓管理者の証明
⑷ 実際の申請・改葬許可証の受け取り
⑸ 行政書士が見るポイントはここだ!
④ 出骨及び納骨当日
⑴ あらかじめ関係者と連絡調整が肝
⑵ 当日の忘れてはいけない持ち物
⑶ 無事に納骨完了
・まとめ
① そもそもの檀家になった経緯
生前に母親が家の近くということもあり亡くなる2年前に購入。母親とお寺の付き合いは良好だが、子供とはそこまでの付き合いはありませんでした。お墓は数百万円の費用を払い建立しました。
② そこで発生した問題点
墓地購入の2年後、母親が他界。その際のお寺の対応と子供たちの認識に相違があり、承継者である子供に不満が募りました。不満の内容は母親死亡時の戒名と法要等の費用について、住職の言動についてとのことでした。その後は1周忌や3回忌の連絡があってもやることはありませんでした。行政書士から見るとおそらく費用が思ったより高い、以前聞いた話と違う、ということから認識の相違ができ不満につながっていくと見ています。
③ 改葬先の行方と墓じまい
そこで、承継者となった子供は弊所へ相談に来られ墓じまいの依頼をされました。受け入れ先はすでに決めており、あとは現在のお寺との関係だけになりました。
⑴ お墓の引っ越し(改葬)に伴う必要戸籍収集とその理由
まず墓じまいの取り掛かりは、改葬許可申請書を作成する前提となる資料の収集です。改葬許可申請書には改葬をする方の生年月日や死亡日、最後の本籍などを記入する欄があります。そのため、戸籍や戸籍の附票等を取り寄せる必要があります。
実は上記の資料を取り寄せるのは近隣の市町村ならまだしも、遠方の市町村だと意外と大変で時間がかかります。しかも昔の戸籍を解読しなければならないのも合わさって、これだけでも皆さん苦労されているみたいです。
この点行政書士は職務上必要であれば戸籍や戸籍の附票、住民票を職権で請求できることとなっております。その場合、特に請求する方と取り寄せたい戸籍の方の関係を証明することなくできるのでかなり早く取り寄せができるようになっております。当然、行政書士の信頼でやっているので不正請求はご法度です。以上豆知識でした。
⑵ 大変な戸籍収集と費用
戸籍の取り寄せは本籍のある市町村役場の戸籍課(市町村役場によって名称は異なります)に請求をいたします。費用は除籍・改製原謄本750円、現在戸籍(最新の戸籍)450円、戸籍の附票300円、住民票300円となっておりますが、戸籍の附票や住民票は稀に市町村役場により異なりますので事前に確認が必要です。
⑶ 遠方の場合の戸籍請求の仕方
遠方の場合は郵送請求をする必要があります。郵送請求の方法はご存じでしょうか。必要書類を封筒に入れ必要料金を入れるわけですが、現金を郵便に入れることはできません。ではどうするか。
郵便局に定額小為替というものがあり、それを購入し同封して送ることで戸籍が手に入ります。
○一般的な必要書類は以下のものです。
・戸籍等請求依頼書(市町村役場によって名称は異なります)
・本人確認書類
・定額小為替
・返信用封筒
○必要に応じて同封するもの
・委任状(代理の場合)
・自分とつながりを示す戸籍または公的資料(必要に応じて)
※詳しくは事前に請求する市町村役場へご確認ください。
戸籍請求は今までしたこともない方も多いのではないでしょうか。
実は、備え付けの請求用紙でなくとも、必要事項が記載されていればワードで作った独自の用紙でも請求できます。
また、戸籍は遡れる時代も限りがあります。明治初期までの戸籍が限界でそれ以前となるともはやとりよせ不可能となりますので、それより前で死亡日が記載できない等あれば「不詳」と記載しましょう。さらには東京や一部都市では戦争の影響で滅失してしまっているものもあり、その場合は滅失証明書が発行されます。戸籍実務って意外と奥が深いです。
⑴ お寺への連絡とお墓管理者の証明
受け入れ先、必要戸籍や改葬許可申請書の準備が出来ましたら、お寺へ連絡いたします。もちろん、その前から相談をしておくのも問題ないと思います。改葬許可申請書にはお墓の管理者であるお寺の証明(捺印)が必要なので、必ずお寺へ連絡する必要があります。
今回は改葬許可申請手続きの一環で弊所から連絡をして、今後の手続きの流れを確認いたしました。
⑵ お寺にかかる費用の確定
お寺に係る費用は、石撤去の費用、お寺へ払う離檀に伴う費用(いわゆる離檀料)、未払いの管理費、閉眼供養等がかかります。一番は離檀料についてたびたび問題になりますが、この性質についてはお布施的なものと考えられています。つまり法的に定められているわけではないものです。もちろん、明示的にお寺との契約や規約で定めている場合もありますので、まずはそちらを確認するべきです。
とはいえ、お布施だったら払わなくてもいいのでは?と思われる方もいますが、今まで慣習や慣例でこれらの費用を支払っていたこともあり、お寺も当然にもらうものと思っているところもあります。この点は、お寺と誠実に話し合い、払える費用を提示してみるのがよろしいかと思います。今回は当初聞いていた費用の半分で収まり、依頼者の方も満足されておりました。なお、未払いの管理料がありましたので、そちらは追加でお支払いいたしました。
弊所が経験上の費用相場はこちらです。
・石撤去の費用 10万円~50万円(㎡数にもより幅があります)
・離檀に伴う費用 1体3万円~20万円
・未払いの管理費 10万円(未払いの月数による)
・閉眼供養 3万円~20万円
以上ご参考ください。
お寺との手続きや費用については改葬の中で一番メインとなる部分です。そこで頭を悩ませている方が多いのも事実です。お寺との話の持って行き方はやはり誠実に現状を話し、理解を得ていく必要があります。ときおり、ニュースで見る通り高額の離檀料を支払うケースもあり、それに心配をされているとは思います。そこについてはその場で決定せず、一度持ち帰って親族や第三者の方に話を聞いてもらうことも大事かと思います。
また、法律はあくまでも目安であり最終手段と考えております。お寺との話し合いでいきなり法律を出すのではなく、まずは誠実に話をすることが解決の近道とも感じております。
⑴ 改葬許可申請書の入手場所及び申請先
改葬許可申請書は現在の墓地を管轄する市町村役場の戸籍課で入手することができます。近隣の市町村役場であれば直接取りに行くことで入手できますが、遠方であればそうはいきません。そういった場合は当該市町村役場のHPでダウンロードできる時もありますし、無い場合でも当該市町村役場に連絡をし、郵便やFAX等で送ってもらうことも可能です。過去に一度だけ直接取りに来ないと渡せないと言われたことがあり、直接取りに行ったことがありましたがかなり稀なケースといえます。高齢な方やあまりにも遠方の方は事情を話して送ってもらうのがいいでしょう。
今回の事例では、横浜市内だったこともありすぐ入手は容易でした。横浜市の場合は行政区がありますので、当該墓地を管轄している行政区(例 港南区に墓地があれば港南区)への改葬許可申請をする必要があります。参考に横浜市の改葬許可申請書を載せておきます。
https://www.e-shinsei.city.yokohama.lg.jp/yokohama/navi/procInfo.do?govCode=14100&procCode=1001903
⑵ 記入の注意点
記入する際は、取得した戸籍等を確認しながら記入するのが確実です。記入の過程でどうしてもわからないところが出てきます。おそらく、最後の住所や埋葬年月日(死亡日とは異なります)等が多いと思います。そこの場所は「不詳」で問題ないですし、そもそも戸籍法上昔の住民票は取得できないので調べようがないです。
⑶ 申請書一番のポイント お墓管理者の証明
可能な限り必要事項を記入しましたら、いよいよ墓地の管理者に証明(捺印)していただきます。霊園だと、霊園側が申請書を作成してくれるところもありますので、詳しくは現在の墓地の管理者に確認してください。今回の事例はお寺であったためこちらが作成し、お寺へ郵送して証明していただきました。
⑷ 実際の申請・改葬許可証の受け取り
それでは作成が完了しましたら、当該墓地を管轄している戸籍課へ申請しましょう。遠方の場合は郵送で返信用封筒を同封する必要があります。市町村役場によっては、受け入れ先の受け入れ証明書または承諾証等の資料を求める場合はありますので詳しくは当該市町村役場に確認ください。今回の事例では不要でした。
その後1週間以内で許可証が無事に届き、後は本番を残すのみとなりました。
改葬許可申請は許可というものの、難しいものではなく特段問題がなければ許可がでます。どちらかというと、それまでの資料集めやお寺及び石屋さんとの連絡調整などの段取りが一番重要です。一生に一度やるかやらないかの墓じまいですから、丁寧に着実にやることが重要です。
⑴ あらかじめ関係者と連絡調整が肝
弊所がやる場合の多くは、当日出骨、当日納骨です。
もちろん遠方や墓地の都合により状況によっては当日中に全部済まないこともあるかと思います。
当日は場所にもよりますが午前10時に現在の墓地に伺い、閉眼供養を小一時間ほどし、お骨をもって移動、その後、午後14時に新しい受け入れ先にて納骨して完了、という流れが一般的かと思います。この点、事前に現在の墓地があるお寺や石屋さんに伺う時間や当日納骨まで済ますことを事前に伝えるとスムーズです。また、親族皆様が集まるときは出骨を終えると会食もあるかと思いますので、それも踏まえて当日の段取りをするのがよろしいかと思います。本事例は市内から市内への改葬であったこと、ご依頼者様は一切お寺へ行きたくないことから弊所のみで執り行わさせていただきました。
⑵ 当日の忘れてはいけない持ち物
当日は改葬許可申請書、お寺への支払う費用等を忘れずにご持参ください。改葬許可申請書は現在の墓地では提示し、新しい受け入れ先に提出いたしますので現在の墓地へは提出しないようにお気を付けください。なお石屋さんへの支払いは工事が終わった後に請求書を送っていただくケースが多いです。トラブルがないように石工事の撤去前及び撤去後の写真は撮っていただくようにお願いしましょう。
⑶ 無事に納骨完了
本事例は、新しい受け入れ先に無事に納骨でき完了となりました。着手から約1か月とスピーディーに進めることができました。これは私の思うところ、依頼者である方と親族の皆様の合意形成、お寺側の理解があったからこそできたものと言えます。
墓じまいの一番のネックはやはり費用の問題ではないでしょうか。
今回は思ったより費用は掛かりませんでした。
とはいえ円満に墓じまいできるかどうかはお寺に支払う離壇料が一番のポイントになるかと思います。
話し方としては、理屈をうんぬんというよりは、今までの感謝の気持ちと共に墓じまいに至った経緯を誠実に話してみることだと思います。
そこで折り合いが合わない時に初めて法律上の話になるのかと思います。
親族・お寺との理解を得ながら進めていけば道は開けると信じています。
長岡行政書士事務所代表
横浜市港南区に事務所を構え、過去500件以上の相続や遺言等の経験から、不安を抱えるお客様の直面している課題をいかに負担少なく解決するかを考え実現している。